「ここにいるよいつもいるよ」 ’99年9月3日
とてもすばらしい本を読みました。
読み始めてすぐに、私はとても幸せな気持ちになりました。
今回はその本のことについて書きます。
みなさんはメアリー・ノートンが書いた「床下の小人たち」という本を読まれたことがあるでしょうか?
その中には、人間の家に住み着いていて針やボタンなどの小物を黙って借りてしまう「借り暮らしの小人たち」が出て来ます。
この小人たちは人間に姿を見られたら死んでしまうとかで、実にひそやかに暮らしているのです。
「床下の小人たち」をベッドで読んでもらって、「もしかしたら、小人たちはわたしの家にもいるんじゃないかしら?」と真剣に考えた小学2年生の少女がいました。
いつもお姉さんを欲しがっていた一人っ子の香ちゃんです。
香ちゃんはさっそく、家にいるかも知れない小人たちに手紙を書きました。
お母さんは小人たちに代わって香ちゃんに返事を書きました。
香ちゃんよりも少しお姉さんのミーシャと少し年下の妹のナンナです。
香ちゃんの生活はにぎやかで忙しくなりました。
香ちゃんはつぎつぎと手紙を書いたからです。
お母さんはせっせとその返事を書かなければなりませんでした。
しかも、お母さんはたしかにそこに小人たちの暮らしがあるように登場人物をつぎつぎにふやして、小人たちの世界を作らなければならなかったのです。
それは作家であるおかあさんにとっても非常に大変なことでした。
小人たちから香ちゃんへのプレゼントを作ったり、小人たちへのプレゼントを作っている香ちゃんの手伝いをしたりとお母さんは苦労の連続なのです。
でも、香ちゃんも成長して行きます。
お母さんも色々と悩み続けます。
そして、香ちゃんが小学5年生の時に決定的な破局が訪れるのですが。
こんなふうにあらすじを読んでも、この本のすばらしさはほとんど分からないと思います。
香ちゃんが書いたたくさんの手紙に私は強く胸をうたれましたし、香ちゃんを気づかうお母さんの心には胸が熱くなりました。
けれども、どのように書いても、私は私が受けた感動の大きさと複雑さを表現できません。
それで、みなさんにもこの本をぜひとも読んでいただきたいと思ったのです。
左の写真がその本です。
題名は「ここにいるよいつもいるよ」です。
今年の5月に出版されたばかりの新しい本です。
出版社はポプラ社で作者は中島信子さんと櫻井香さんです。
姓はちがいますが、これはペンネームで二人は実際の親子です。
そうです。この物語はノンフィクションなのです。
このような母子と、二人をそっとやさしく見守っている父親が現実に存在したことを、まるで奇蹟のように私は感じているのです。